紋別の短い夏は終わり。朝晩は秋の気配が感じられるようになりました。青々と茂っていた草木も、やがては落葉のシーズンを迎えます(少し気が早いですが)。
落葉の季節になると大変なのが、その掃除です。では、落葉のもとになる木が隣の家の木の場合は…というのが、今回のテーマです。
たとえば、隣の家の木の枝が敷地まで張り出しているため、その木からの落葉で掃除が大変だ、という場合、枝を勝手に切り取ることはできるのでしょうか。
法律では、隣家の木の枝が境界を越えて敷地内に張り出してきた場合、木の所有者に対して、張り出してきている枝を切り取るよう請求することができます。
注意していただきたいのは、法律はあくまでも、相手に枝を切るよう請求することができるとしているだけであって、勝手に切り取ってよいとは定めていないことです。張り出してきている枝を相手が切り取らないからといって、法律の手続によらず勝手に切り取ってしまうことは、権利の行使であっても実力行使は許されないという「自力救済の禁止」に違反して許されませんので、注意してください。
相手に請求しても切り取ってくれないときは、訴訟や調停といった法的手段を使って解決することとなります。
また、境界を越えた木の枝によって日当たりが悪くなったり、落葉で雨どいが詰まるなどしたために、損害を被ることがあります。この場合、その木の所有者に対して、枝の切り取りの請求のほかに損害賠償の請求をすることが可能な場合があります。
ただし、落葉は自然現象でもあります。ですから、境界を越えて枝が張り出している場合でも、落葉の程度がさほど酷いわけではなく、土地を使う上で大きな障害にはなっていないような場合には、枝の切り取りの請求が認められないケースもあります。
落葉はご近所トラブルの代表例ですが、普段からご近所同士で話し合い、なるべくであれば穏便に対処したいところです。
なお、脱線ですが、集めた落葉で堆肥を作り、ガーデニングに利用できるような場合もあるそうですので、こういった解決策も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第207号(2015/9/4 発行)掲載