自分の老後の面倒をみてくれる子に財産を残したい…ごく自然な心情だと思いますが、どのような方法でこの希望を叶えることができるでしょうか。
老後の面倒をみてくれる子に財産を残す方法としては、言うまでもなく遺言を書く方法があります。例えば、長女が老後の面倒をみてくれるというのであれば、この長女に全ての財産を取得させるという遺言をすることは、もちろん可能です。また、遺言はいつでも自由に取り消したり、作成し直したりすることができ、最後の日付の遺言が有効になりますから、事情が変われば(たとえば、長女が面倒をみてくれなくなった場合など)遺言を作成し直すこともできます。
しかし、遺言をする際に気をつけたいのが「遺留分」(いりゅうぶん)です。遺留分というのは、兄弟姉妹以外の相続人が、父や母など(被相続人)の残した財産に対して取得することを保証されている一定割合のことです。そして、この遺留分は、遺言よりも優先するものですので、先ほどの例では、仮に長女に全財産を相続させるという遺言を残していても、他の相続人はこれに待ったをかけることができるわけです。具体的には、遺留分を侵害された相続人(先の例では次女など)は、長女に対し、遺留分の取り戻しを請求することができます。
したがって、遺言を作成する際には、この遺留分を十分考慮に入れる必要があります。場合によっては、各相続人に遺留分に相当する財産を取得させ、そのうえで面倒をみてくれる子により多くの遺産を取得させる内容の遺言にするほうが、死後の争いを生じさせないことにもなるでしょう。なお、具体的にどの程度の遺留分が発生するのかは、それぞれのケースで異なりますので、遺言を作成する前に専門家にご相談されるのも一つの方法だと思います。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第225号(2016/5/27 発行)掲載