「公正証書」という言葉をお聞きになったことはありますか。
たとえば,友人とお金を貸し借りする場合,後で「そんなお金は借りてない」などと借主に言われないよう,借用書など,何らかの証拠を残しておいたほうがよいことは,以前のコラムでもお話しました。さらに,もっと強力な証拠を残すという意味では,これから説明する公正証書の作成がオススメです。
公正証書とは,当事者間で作成する契約書とは違い,「公証人」という一種の公務員が,法律的な行為などに関する事実について作成する文書です。例に挙げたお金の貸し借りに関することはもちろんですが,その他にも,遺言を公正証書の形で残す,あるいは,離婚後の養育費の支払方法を公正証書の形で取り決めをすることもよくあります。
公正証書を作成するメリットは何点かありますが,今回は二点に絞って説明します。
メリットの一つ目は,契約などをきちんと証拠化できるのと同時に,これが改ざんされたり,紛失するおそれがないことです。公正証書は作成されると,その原本を公証役場(公正証書を作成する場所)で保管することになっています。ですから,仮に写しを失くしてしまっても,また公証役場へ行けば,その写しを発行してもらうことができるのです。さらに,原本を公証人が保管していますから,改ざんもできないこととなります。
また,相手が借りたお金を返済しない場合,通常であれば裁判を経てから,相手の財産を差し押さえて回収する手続に進むことになりますが,公正証書に決まった文言を入れておけば,裁判を起こさなくても相手の財産を差し押さえる手続に進むことができます。裁判を起こすと,時間と手間がかかりますし,その間に相手が行方をくらますといったことも考えられるため,このメリットは非常に大きいのです。
さて,この公正証書ですが,公証役場という場所で作成してもらうこととなります。「役場」という名前が付いていますが,市役所や町役場では作成できません。残念ながら紋別に公証役場はなく,一番近くて名寄市か北見市の公証役場となりますので,そちらに出向いていただくこととなります。詳しい作成方法や作成費用などは,あらかじめ公証役場に問い合わせておかれるとよいでしょう。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第231号(2016/8/19発行)掲載