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リーガル通信 ~離婚・養育費~

2017年02月16日

  お子さんがいるご夫婦が離婚される場合,養育費の支払いについて取り決めをする場合が多いのではないでしょうか。その支払が途中でストップしてしまった場合,相手方にお子さんの養育費を支払わせるよい方法はないでしょうか。

 

 実は,離婚の際にどのような方法で養育費の支払を決めたのかによって,取りうる手段が違ってきます。まず,家庭裁判所の調停や裁判の手続で養育費の支払を決めた場合には,裁判所を通して,相手方に対し,調停や裁判で決まったとおりに養育費を支払うよう,促してもらうことができます(履行勧告,といいます)。この場合は,裁判所に勧告の制度を使いたいという申し出をしなければなりません。

 

 ただし,この勧告には,養育費を支払わせる直接的な強制力がありません。そこで,相手方がこれにも従わない場合,最後の手段として,強制執行,すなわち差押の手続を利用することとなります。差押の手続とは,相手方の財産を差し押さえて競売し,その代金の中から養育費の支払を受けたり,相手方の給料や預金を差し押さえて,その中から養育費の支払を受ける制度です。

 

 現在の法律では,相手方が養育費の支払を行っていない場合,実際に期限を迎えている部分の養育費だけでなく,まだ期限が来ていない将来に支払われるべき部分の養育費も差し押さえの対象となります。また,給料を差し押さえる場合,他の債権の回収とは異なり,給料の2分の1の金額まで差し押さえることができます(他の債権は4分の1まで)。ただし,差押の手続は専門的ですし,相手方が自営業者で給料をもらっていない場合等,差押に非常に苦労する場合もあります。差押を検討する場合には,専門家にご相談することをお勧めします。

 

 さて,これまでは,裁判所の調停などで養育費を決めた場合を前提にお話しました。では,これ以外の場合はどうなるかと言いますと,実は,勧告の制度も差押の制度も使うことができません。したがって,養育費の支払をきちんと確保するには,裁判所の調停手続で養育費の金額を決める,あるいは,養育費の合意について公正証書を作成しておくことが望ましいのです(公正証書を作成した場合も差押が可能となります)。

 

 

弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第243号(2017/2/17発行)掲載