先日,関東地方のとあるコンビニで,駐車中の車に「タイヤロック中」「外してほしかったら4万ください」などと張り紙をした画像が広まり,話題となりました。報道によると,実際には,店側が用意した車に,いわば「見せしめ」として行ったもののようですが,街中ではよく「無断駐車罰金○万円」といった看板を見かけます。では,罰金は実際に払わなければならないのでしょうか。
この場合,無断駐車された側が請求できるのは,「無断駐車によって自分が被った損害」ということになります。たとえば,1時間500円の駐車場に1時間無断駐車された場合,無断駐車によって被った損害は500円ということになります。ですから,仮に「無断駐車罰金3万円」と看板に書いていたとしても,駐車された側は3万円を請求することはできず,500円しか請求できないこととなります。
なお,民法で,契約違反をした当事者の違約金の額をあらかじめ定めておけるという条文があります。そこで,この看板は,違約金の額をあらかじめ定めておいたものだと言うことも考えられますが,この違約金の額は,お互いの合意で定められるものとされています。無断駐車した人とされた人とで,このような合意が成立したとみることは難しいでしょうから,この条文を根拠に請求することも難しそうです。
そういったわけで,看板に記載されている金額を罰金として支払う必要はなさそうですが,注意していただきたいのは「実際に生じた損害額」は支払わなければならないということです。たとえば,1時間500円の駐車場でも,丸一日無断駐車していれば1万円以上の損害額を支払わなければならないですし,また,お店の駐車場に無断駐車した場合,仮にそのことによって来店するはずだったお客さんが来店できなくなってしまうと,その分の損害を賠償しなければなりません。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第257号(2017/9/1 発行)掲載