自分の子供が他人に迷惑をかけてしまったとき,親はその責任をどこまで負わなければならないのか…お子さんをお持ちの方にとって気になるテーマかと思います。
まず,子供が成人している場合について考えてみます。ときどき,お金を貸している方から,「(成人している)子供が借金を返せないのなら,親に請求することはできないのか」という相談をお受けしますが,結論から申し上げると,親に対して法的に請求することはできません。
なぜなら,子供であっても,親とは別人格ですから,別人格である子供のやったことに対して,親が責任を負う根拠がないからです。よく「道徳上」という言葉で,親に対して請求される方もいらっしゃるようですが,そこに法的な根拠はないと言わざるを得ないのです。
もっとも,親が子供の借金の保証人になっているような場合は,これとは別に考える必要があり,親は保証人としての責任を負うこととなります。
では,子供が未成年である場合はどうでしょうか。成人していないお子さんが借金をすることはあまりありませんが,たとえば,お子さんが自転車に乗っていて事故を起こしてしまった場合や,お子さんが物を壊してしまったような場合などは,賠償の問題が生じます。
この場合の親の法的な責任についてお話しますと,お子さんの「責任能力」の有無で結論が分かれてきます。
「責任能力」とは,簡単に言えば,物事の良し悪しがわかる能力で,一般的には,小学校を卒業するくらいになれば責任能力はあると言われています。
そして,お子さんに責任能力がない場合,親は子供を適切に監督しなければならず,きちんとした監督をしていなかった場合には,親が法的責任,つまり賠償責任を負うこととなります。
一方,お子さんに責任能力がある場合,親は法的責任を負わないこととなりそうですが,親がきちんと子供を監督していれば相手に損害を発生させずに済んだというような場合ですと,場合によっては,親も法的な責任を負うこともあります。
このように,成人していないお子さんの行為によって,親が賠償責任を負うケースもありますので,注意が必要です。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第259号(2017/9/29 発行)掲載