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リーガル通信 ~建物明け渡し~

2019年02月08日

 今回は,賃貸物件の明け渡し事件について記載します。不動産を賃貸していて,賃料を滞納する借主がいた場合,大家さんはどうすればいいでしょうか。

 

 一例として,ABに建物を貸していて,賃貸借契約書に「賃料の不払いがあれば賃貸借契約を解除できる」という旨の記載があり,実際にBに賃料不払いがあったとします。

 この場合,Aは,賃料を支払わないBを,契約を解除して追い出したいと思うかもしれません。しかし,Bの賃料滞納が,まだ一度だけであれば,契約を解除することができないのが一般的です。

 なぜかというと,賃貸借契約関係において,借主は,法律や判例(判例とは,簡単に言うと,今までの裁判所の判断のことです。)で,厚く保護されています。これは,賃貸借契約が継続的な契約であり,また生活の本拠は保護されなければならない,との考え方があるためです。これを信頼関係法理といいます。そのため,貸主から賃貸借契約を解除する場合には,貸主借主間の信頼関係が破壊されている必要があります。もっとも,賃料不払いが3回程度継続していれば,信頼関係も破壊されており,賃貸借契約は解除できることが多いと一般的には言われています。

 

 また,仮に契約書に無催告で解除できる条項(無催告解除特約)があっても,原則的には,一度は催告をしてからでないと,賃貸借契約は解除できません。これも信頼関係法理による賃借人の保護です。無催告解除特約があっても,この信頼関係法理により,契約解除には,一度は催告が必要となります。

 もっとも,これには例外があり,「催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合」には,無催告解除特約により,無催告の解除ができます。例えば,長期間の賃料滞納がある場合などが,「催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合」に該当する可能性がある場合と考えられます。この場合には,無催告解除特約により,無催告の解除が認められる可能性があります。

 

 

 

弁護士 梶本貴之
ホワイトペッパー第293号(2019/2/15発行)掲載