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リーガル通信 ~相続法改正①~

2019年09月26日

 相続法の改正が行われました。今回は,改正された相続法の一部を記載します。

 

 まず,「遺産の分割前に,遺産の払い戻しが行われた場合」について,法律が改正されています。例として,5000万円の遺産があり,5人の相続人のうち甲1人が1000万円を払い戻していた場合,を用いて説明します。

 

 法改正前であれば,この場合,すべての相続人が同意しなければ,1000万円を遺産分割の対象とすることができず,4000万円だけが遺産分割の対象となりました。よって,各相続人の取り分は800万円になり,払い戻しを行った相続人甲だけだが計1800万円(払い戻した1000万円+遺産分割による800万円)を取得することとなります。しかし,これでは,相続人甲が不当に利益を得て,公平な遺産分割ができない恐れがありました。

 

 そこで,法改正が行われました。改正法では,「相続人が,遺産分割前に,遺産の一部を処分した場合,処分した相続人が反対した場合でも,他の相続人が同意すれば,処分された財産を遺産分割の対象とすることができる。」こととされました。これにより,上記の例では,相続人甲が反対しても,払い戻された1000万円を遺産分割の対象とすることができるようになりました。よって,5000万円全額を5人で分けることになり,各相続人が1000万円ずつを取得することになります。

 

 また,法改正により,遺産分割を行っていなくても,相続人単独で,預金の払い戻しができることとなりました。もっとも,全額の払い戻しができるわけではありません。払い戻し額は,預貯金の1/3に法定相続分を掛けた金額に限られます。また,払い戻しの上限額は150万円です。たとえば,B銀行の300万円につき,1/2の相続分を持つ相続人が預金の払い戻しを受ける場合を想定します。この時,B銀行から払い戻しを受けられる上限は,50万円となります(300万円×1/3×1/2)。

 


弁護士 梶本貴之
ホワイトペッパー第309号(2019/9/27発行)掲載