①はじめに
今回は,「取引相手から商品を買ったが契約を解除したい場合」など,契約の解除について記載します。また,2020年4月1日から,民法が改正され,契約の解除についても新しいルールが始まります。そのため,民法改正後のルールについてもご説明します。
②契約違反の程度が軽い場合の解除
まず,取引相手に契約違反があった場合などは,契約の解除をすることができます。もっとも,「契約違反の程度がとても軽い場合」でも,契約は解除することができるでしょうか。
例えば,取引先から商品を1万個買ったのに,取引先は商品を9995個しか用意できなかった場合などです。この場合,1万個の注文に対し,足りなかったのは5個だけなので,契約違反の程度は軽いといえるかもしれません。
この点について,現在の民法は,このような軽微な契約違反でも契約が解除できるのか,はっきりと記載されていません(判例では解除が認められることがあります。)。
もっとも,改正後の民法では,契約違反が軽微な場合は,契約を解除することができないと明記されています。
③取引相手に責任がない場合の契約の解除
「取引相手が契約の義務を果たせなくなったが,そのことに取引相手に責任がない場合」,こちらは契約の解除をすることができるでしょうか。
例えば,取引相手から家を購入したが,引き渡してもらう前に地震で家が滅失したような場合です。このような場合,取引相手は家を引き渡すことができませんが,そのことに取引相手に責任はありません。
この点,今の民法では,契約を解除するには,相手方に契約違反の責任があることが必要と考えられています。すると,今回の地震で家が滅失した場合のように取引相手に責任がない場合には,契約の解除はできなくなってしまいます。
他方,改正民法では,契約を解除するのに,相手方に責任は不要ということになります。先ほどの例の場合では,取引相手に地震の責任はありませんが,取引相手は家を引き渡すことはできません。よって,こちらは,契約を解除することができます。
弁護士 梶本貴之
ホワイトペッパー第317号(2020/1/31発行)掲載