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リーガル通信 ~意思能力・錯誤・詐欺~

2020年05月21日

①意思能力(改正民法3条の2)

 重度の認知症になってしまった高齢者の方が,自分でも良くわからずに不要な高額の商品を買ってしまった場合,どうすればいいでしょうか。この場合,意思能力が無いとして,高額商品の売買が無効になることがあります。意思能力が無効と判断されれば,商品を返却し,支払ったお金を取り戻すことができます。

 

②錯誤(勘違い)(改正民法95条)

 商品を買うつもりがないのに,勘違いで購入してしまった場合,どうすればいいでしょうか。このような勘違いを,法律用語で「錯誤」といいます。錯誤(勘違い)がある場合,契約を取り消すことができる場合があります。

 錯誤には2種類あります。1つは,「絵画を購入しようと思って,百万円で買うと契約書に書こうと思っていたのに,誤って二百万円と書いてしまった場合」のように,意思表示に対応する意思を欠く錯誤です。このような錯誤がある場合,契約を当然に取り消すことができます。もう1つは,「絵画を持っていないと思い購入したが,実はすでに持っていた場合」のように,購入の動機に錯誤がある場合です。このような動機の錯誤の場合,買主が売主に対して「絵画を持っていないので購入しようと思った」というような表示をしていた場合には契約を取り消すことができます。

 もっとも,買主に重大なミス(過失)がある場合は,買主は錯誤の主張をすることが原則できません。ただし,例外的に,売主が重大なミスを知っていた時や,売主が同じ錯誤に陥っていた場合には,買主は契約を取り消すことができます。

 

③第三者の詐欺(改正民法96条)

 売主でも買主でもない第三者が詐欺をしたせいで,商品を購入させられてしまった場合,買主は契約を取り消すことができます。ただし,売主が詐欺のあったことを知ることができず,知らなかった場合には,買主は契約を取り消すことはできません。そして,詐欺で契約が取り消されると,商品を返却し,お金を返してもらうことになります。

 

 

弁護士 梶本貴之
ホワイトペッパー第325号(2020/5/22発行)掲載