集合住宅における近隣トラブルもさることながら,一戸建ての家においても,隣地隣家との間でトラブルが生じることがあります。いくつか例を挙げてみます。
まず,隣地隣家との間で,土地の境界が不明確であることから,トラブルに発展することがあります。この場合,境界の確定もしくは土地の所有権を確認する裁判を起こすことで,紛争を解決することが考えられます。
次に,私道を勝手に通行したことによるトラブルが考えられます。私道とは,ある人がその所有権に基づいて交通の用に使う道路のことです。私道の所有者は,私道を自由に使用・利用することができ,他人は,所有者の同意がなければ私道を利用することはできません。私道を通行したい場合には,私道の所有者と交渉して,通行の許可を得なければなりません。
私道の維持管理は,私道の土地所有者が行います。私道を複数名で利用している場合には,私道の維持管理に関する事柄は,所有者を含む話し合いで決まることになります。私道の維持管理費が必要であれば,話し合いにより分担することになります。
では,自宅が他人の土地に囲まれており,公道に接しておらず,公道に出るためには他人の土地を通らなければならない場合はどうすればよいでしょうか。私道の通行のように,勝手に他人の土地を通行することはできないのでしょうか。
このように,他人の土地に囲まれた土地で公道に通じていない土地を「袋地」,袋地の周りの土地を「囲繞地(いにょうち)」といいます。この場合,民法では,袋地の所有者は,囲繞地を通行してもよいことが認められています。もっとも,どこを通行してもいいわけではなく,損害が最も少ない箇所に限ります。
隣人とは長いお付き合いになりますので,トラブルにならないよう,お互い円滑に生活していきたいものですね。
弁護士 原田宏一
ホワイトペッパー第163号(2013/12/27発行)掲載