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リーガル通信 ~ゴーストライター問題~

2014年03月25日

 先日,ある有名作曲家が,他の作曲家による作曲を自身の作曲と偽り楽曲を発表し,CDを販売していたことが発覚し,社会問題となりました。いわゆる「ゴーストライター」問題です。この有名作曲家の行為について,道義的に問題があると思いますが,法律的にも問題があるか否か考えてみましょう。


 まず,刑事責任について,詐欺罪(刑法第246条)に問われるでしょうか。他の作曲家による作曲を自身の作曲と偽り,レコード会社やコンサート主催者,ファンが有名作曲家の曲と信じ,その結果として著作権料や作曲料を得ていたとなれば,実害の程度は定かではないにしろ,詐欺罪に問われる可能性はあります。


 次に,他人の作曲を自身の作曲と偽ったことについて,著作権法上の問題点はあるでしょうか。著作権法第121条では,著作者名詐称罪が定められています。これは,著作者ではない者の氏名を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者は,1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処されるというものです。楽曲の著作権が2人の作曲家のいずれに属しているのかは,2人の間の契約(ゴーストライティング契約)の有無や内容によるためケースバイケースですが,著作物を頒布した者とは,レコード会社等のことを指すため,有名作曲家自身が同罪に問われることはありません。


 さらに,民事責任について,レコード会社やコンサート主催者が,有名作曲家に対し,不法行為に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。具体的には,今回の騒動を受けてCD等の販売中止やコンサートの中止を余儀なくされたことによる損害賠償であり,かなりの高額となることが想定されます。


 しばらくの間は,ゴーストライター問題が世間を騒がせることになりそうです。今回検討した問題点についても注目してみて下さい。


弁護士 原田宏一
ホワイトペッパー第169号(2014/3/21発行)掲載