クリスマスもそうですが、この時期の風物詩と言えば「忘年会と新年会」。「昨日は飲みすぎちゃって…」という会話がいろいろなところで交わされているのではないでしょうか。
さて、飲み会に付きものなのが、酔っ払った人の介抱。年の終り・年の始めだからと景気よくお酒を飲みすぎた友人知人の介抱って、本当に大変ですよね。
だからといって、酔いつぶれた人を放置して自分だけ帰ってしまうと、罪に問われる可能性があります。
実際に、このような事例がありました。泥酔した被害者を家に連れて帰ろうとしたが動かないので、衣服をはぎ取ったら寒くて起きると思い、衣服をはぎ取りながら引きずったものの動かないので、全裸状態で放置したまま帰宅したところ、被害者が凍死したという事例で、裁判所は放置した人に、保護責任者遺棄致死罪という罪を適用しました。
保護責任者遺棄罪とは、「病気の者」を「保護する責任のある人」が、その者を「遺棄」したり「生存に必要な保護をしなかった」ことを処罰するものです。
酔いつぶれた人の放置ケースだと、酔っ払いが「病気の者」にあたるかは議論がありますが、あたると判断した裁判例があります。
また、単に酔いつぶれた人の横を通りすがった人は、酔っ払いを「保護する責任のある人」とは言えませんが、裁判所では、酔っ払いを家まで送っていくよう頼まれていた同僚や交際相手が「保護する責任のある人」とされたケースがあります。
そして、人を放置したまま立ち去ることも「遺棄」にあたると考えられているため、結果として、酔いつぶれた人を放置すると、保護責任者遺棄罪が成立する可能性があるのです。
もし同僚や友人が泥酔してしまったら、寒い外に放置などせず、ちゃんと面倒をみてあげてください。そして、自分の力だけでは面倒を見切れない場合は、警察に連絡して酔いつぶれた人を保護してもらいましょう。
ともあれ、酒は飲んでも飲まれるな。お酒はみんなで楽しく飲むのが一番ですね。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第189号(2014/12/26発行)掲載