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リーガル通信 

2015年05月18日

「亡くなった主人の預金通帳から引き出しをしようと思ったけれど,できなかった。どうしてよいかわからない」といったご相談をよくお受けします。  今回は,亡くなった方名義の預貯金についてお話したいと思います。

 

 金融機関は,口座の名義人が亡くなったことを把握した場合,その口座を使えなくします(口座凍結)。冒頭のご相談者がご主人の預金を引き出せないのは,これが理由です。口座の凍結を行い,故人の口座から不正に預金が引き出されることを防いでいるのです。

 

 さて,少し専門的な話になって恐縮なのですが,預貯金や現金は「可分債権」,つまり,1円単位できっちり分けることができる物と考えられています。そのため,各相続人は,法律で決められた相続分の範囲であれば,他の相続人から同意をもらわなくても,金融機関に対して払戻を請求する権利があります。

 たとえば,相続人が妻と子供二人で,夫が一千万円の預金を遺して亡くなったケースだと,妻は子供から同意をもらわなくても,金融機関に五百万円の払戻を請求できることになります。


 ところが,金融機関に頼んでも実際はこのような手続に応じてもらえません。というのも,多くの金融機関は,「相続人全員が同意しなければ払戻に応じない」という立場をとっているからです。金融機関としては,誰か1人に払戻をしたことで相続人間のトラブルに巻き込まれるリスクを避けたいという思いがあるのでしょう。

 

 そういったわけで,故人の預貯金を払い戻すためには,相続人全員から印鑑をもらわなければならないのですが,これが一苦労…。

 他の相続人と面識がある場合には比較的スムーズに進みますが,会ったこともないような場合には,戸籍をたどっていって相続人の居場所を探さなければなりません。また,相続人が自分の他に何人いるかそもそもわからない,といったケースも多くみられます。


  そうかといって,何も手続を取らなければ,故人の財産がいつまでも眠ったままの状態となってしまいます。手続に困ったら,まずは専門家にご相談いただければと思います。

 

弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第199号(2015/5/15 発行)掲載