新生活の季節です。進学や就職など、新しい生活への期待に胸を膨らませている方も多いかと思います。新しく部屋を借りて新生活をスタートさせる方も中にはいらっしゃるかと思います。今回は、そんな方にも、すでに部屋を借りて生活している方にも知っていただきたい、部屋の原状回復についてお話したいと思います。
部屋を借りている方は、当然ですが、借りた物を壊したり、傷をつけたりしないよう、注意して使用しなければいけません(難しい言葉で「善管注意義務」といいます)。そして、
借りている方がわざと、あるいは自分の不注意で建物やその内部にある物(畳や壁紙、備え付けの家具など)を壊した場合には、これを元通りに補修してから大家さんに返さなければなりません(「原状回復」と言われるものです)。
たとえば、子供が壁に落書きをしてしまった、壁に大きな穴を開けてしまったといった場合や、日々の掃除を怠っていたことで、風呂場にカビが生えてしまったといった場合には、借りている方に原状回復の義務が発生し、その分の負担をしなければなりません。これらは、注意していれば防ぐことができるものですから、借主で負担してくださいということになっているわけです。
一方で、「原状回復」とは、全ての物を完全に入居時の状態に戻すわけではありません。借りている方の落ち度なく、普通に使っていても自然と汚れたり、消耗が進んでしまう部分については、これを取り替えて新しい物に換えたりする義務まではありません。たとえば、日が照って畳や壁紙が変色した、たんすなどを置いたことで床がへこんでしまったといった場合は、これらを元に戻す義務までは負わないということになります。また、築年数が経過している物件などは、借りる際に元々傷などがついている場合もありますが、これについても原状回復の義務を負わないことになります。ですから、部屋の引渡しを受ける際に、(できれば大家さんや管理会社立会いのもとで)物件の確認を行っておくのがよろしいかと思います。
なお、どういった場合に原状回復の義務を負うのかについては、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものを公表しています。インターネットからも閲覧可能ですので、気になった方はご覧になられてはいかがでしょうか。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第221号(2016/4/1 発行)掲載