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リーガル通信

2016年04月28日

 熊本県や大分県で大きな地震が起きてしまいました。今回の地震は直下型地震ということもあり、建物に大変大きな被害が出ている地域が広範囲に及んでいます。被災された皆さんは、本当に不安な日々を過ごしていらっしゃることと思います。


 さて、今後クローズアップされるであろう被災地での問題が、いわゆる「二重ローン」です。住宅ローンが残っている自宅が地震で住めなくなってしまったため、新たに住宅を建てる必要がある、でも、その際にまたローンを組まなければならない…このように、被災者は二重のローンを背負うことになってしまうのです(なお、住宅が倒壊しても、ローンは自動的にゼロにはなりません)。


 これまで、二重ローンの相談を受けた場合、私たち弁護士は、「それじゃあ、自己破産するしかないですね」と言うしかありませんでした。しかし、自己破産をすると、①今後、再建のためにお金を借りる必要が出てくるにもかかわらず、新たな借入をすることができなくなる、②保証人にローンが請求されてしまう、③破産をすると、手元に百万円程度の財産しか残すことができない、といった不便を強いられることになります。このようなアドバイスをすることに、私たち弁護士は非常にもどかしさを感じていました。


 そこで、東日本大震災を機に、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」という制度が整備されました。これは、先ほど述べた自己破産をする際のデメリットをなくした上で、震災前に抱えていたローンの支払を免除してもらう制度です。具体的には、①破産する場合と違って、震災後にも新たな借入をすることができる、②保証人にはローンを請求しない、③手元にまとまった財産(最高で五百万円)を残すことができ、また、支援金や義捐金をこれとは別に残すことができる、というものです。つまり、この制度を利用すれば、震災前の住宅ローンを支払わずに済む一方で、新たに住宅ローンを組んで自宅を建てることができ、かつ、手元にまとまった財産を残すことができるようになるのです。


 この制度を利用するには、様々な要件に合致している必要がありますが、いざという時の一つのツールとして、知っておかれてもよいのではないでしょうか。

 

 

 

弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第223号(2016/4/29 発行)掲載