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リーガル通信 ~秘密録音~

2016年11月10日

 職場内でのトラブル(セクハラやパワハラなど)や不倫を原因とした離婚などのご相談の際,上司の暴言や,不倫を認めた相手の発言を録音したデータは証拠として使えますか,というご質問をしばしばいただきます。相手の同意を得て録音する分には問題は少ないですが,では,相手に無断で録音をした場合はどのように考えられるか,今回は「秘密録音」についてお話したいと思います。

 

 この点,裁判所はどのように考えているかと言うと,相手との会話を秘密で録音することは,通常は話し手の権利(人格権)を侵害するものであるとしつつ,その録音の手段や方法が,「著しく反社会的」と認められない限りは,相手に無断で録音をしたものであっても証拠として使うことはできるとしています。

 

 「著しく反社会的」という言葉がちょっとややこしいかもしれませんが,相手に録音していることがバレないように,ポケットなどにレコーダーを忍ばせて録音するようなレベルであれば,これが「著しく反社会的」だと評価されることはないでしょうから,このようにして録音されたものは証拠として使えるのではないでしょうか。逆に,自分に有利な発言を引き出そうと相手を脅迫して発言させ,これを録音したような場合には,「著しく反社会的」であると判断されて,証拠として使うことはできないでしょう。

 

 また,配偶者が不倫をしている証拠を掴もうと,不倫相手の家や敷地に勝手に侵入し,盗聴器を設置して無断で録音することもまた問題です。先ほど出したキーワードの「著しく反社会的」にあたることは間違いないですし,そもそもこれは,秘密録音ではなく盗聴にあたるとも言えるからです。

 

 裁判となると証拠のありなしが鍵になってきます。ですので,様々な手段で証拠を集めようと必死になることもありますが,中には証拠として使えるのか判断に迷う場面が出てくるかもしれません(録音のほかによく質問されるのが,不倫相手とのメールやラインを写真に撮ったものなどです)。もし判断に迷うような場合には,事前に専門家に確認しておくのもよいかもしれません。

 

 

弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第237号(2016/11/11発行)掲載