先日の新聞の中で,道内でネット通販の詐欺被害が急増しているという記事を見つけました。警察が把握しているだけでも,被害額は三千万円近くにも及んでいるとのことです。特に,代金を支払っても商品が届かないケースが急増しているようです。
このケースのように,通信販売で代金の全部あるいは一部の前払いを求めている場合,通販業者は,顧客に対し,その申し込みを承諾したという通知を送らなければなりません。この承諾通知によって,業者と顧客の契約が成立しますから,代金を支払っても承諾通知が業者からなされていない場合には,申し込みを撤回すると業者に告げたうえで,すでに支払った代金の返還を求めることができます。
逆に,承諾通知がすでに発せられている場合には,契約が成立していることとなり,無条件に契約を解約することはできません。しかし,商品を一定期間内に送るよう催促しても業者が送ってこなければ契約の不履行ということとなります。そして,契約が履行されない場合には契約の解除ができますから,まずは商品を送るよう催促し,それでも送ってこなければ契約を解除して代金の返還を請求すべきでしょう(なお,催促も契約の解除も,書面,できれば配達証明付きの内容証明郵便で行うべきです)。
とは言え,何となくおわかりの方も多いでしょうが,人を欺くような業者ですから,代金の返還を請求した場合でもこれに応じない,あるいはそもそも業者と連絡すら取れなくなるケースも多いかと思います。ですので,自己防衛して悪質な業者に騙されないようにすることが一番大事なことなのです。
消費者庁は,ネット通販における注意ポイントとして,①所在地や連絡先,他の利用者の評価など事業者の情報を自分でしっかり確認する,②一般に流通している価格よりも大幅に安く販売されているなど,購入する商品が模倣品でないか十分に注意する,③クレジットカードが利用できず,支払方法が銀行振込のみしか用意されていない場合で,個人名口座の場合には十分に注意する,などをあげて注意を呼びかけています。
ネット通販は手軽で便利ではありますが,油断しているとトラブルに巻き込まれる危険性もあるものです。利用する際には十分注意を払い,少しでも疑問を感じたときには,立ち止まって取引を中止する決断も必要でしょう。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第249号(2017/5/12発行)掲載