このコラムをご覧いただいている方の中には,お正月を迎えると,お子さんやお孫さんにお年玉を渡される方もいらっしゃるかと思います。諸説あるようですが,由来は鎌倉時代まで遡るほど,日本の伝統行事として定着していると言ってよいでしょう。
私たち弁護士が,お年玉のことでご相談を受けることはほとんどありません。しかし,インターネットなどを見ていると,「お年玉を親に勝手に使われてしまった!」といった子供からの悲鳴があがっていたりしています。そこで,このようなことに問題はないのか,あえて法的な観点から考えてみたいと思います。
まず,お年玉は,親(あるいは祖父母など)が子供にあげたもの(法律用語では「贈与」といいます。)です。そして,お年玉が子供にわたった時点で,その金銭は子供のものとなります。他方,民法では,親に子供の財産を管理する権限があることを認めています。ですから,子供にあげたお年玉を,親が子供からあずかり,これを親が管理することは法的には問題ありません。
もっとも,親に認められているのはあくまでも「管理」であり,勝手に使ってよいということではありません。生活が苦しいからといって自分の生活費にあてたり,自分の遊興費に使ってしまったりすると,財産管理権を濫用したと評価されてしまいます。この場合には,使ってしまったお年玉を子供に返還しなければなりません。また,子供の食費や教育費にあてることも,基本的にはNGでしょう。これらは基本的には,親のお金でまかなうべきものとされていますから,たとえ子供が習い事をしたいと言って,その月謝をお年玉から出すというのも,適切な使い方とは言えないでしょう。
もちろん,ご家庭の経済状況などで当面の資金が必要になる場面も出てくるでしょう。そういったときに,ご自身が管理しているお年玉を使ってしまいたくなる気持ちもわからないではありません。ですが,そういった必要性が生じた際には,使い道やその必要性などをお子さんにきちんと説明しておくことが大事でしょう。思わぬところで親子関係にヒビが入らないよう,気をつけていただければと思います。
弁護士 田村秀樹
ホワイトペッパー第265号(2017/12/22発行)掲載