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リーガル通信 ~詐害行為取消権・免責的債務引受~

2020年06月18日

①はじめに

 企業活動では,債権を回収することが重要になります。今回は,債権の回収に関わりのある2つの制度を紹介いたします。

 

②債務の引受

 A社は,個人事業主の甲に1千万円を貸していたところ,甲が死亡し,乙と丙が相続したとします。また,乙は甲の事業を承継し,資産も十分に有しているようでした。そこで,A社は,乙に甲の借金をすべて引き受けてもらいたいと考えました。この時,A社はどうすればいいでしょうか。

 A社としては,一定の条件を満たせば,乙に,丙の借金もすべて引き受けてもらうことができます。これを,免責的債務引受といいます。A社としては,乙と,乙が1千万円全ての債務を引き受けることを合意し,合意したことを丙に通知することで,免責的債務引受の手続きを行うことができます。

もっとも,第三者が担保権を設定している場合には,担保権を移転するには,第三者の承諾が必要です。

 

③詐害行為取消権

 B社は,丁社に1億円を貸していましたが,丁社は資金が枯渇していました。しかし,丁社は戊社に対し,不動産を贈与し登記も移転させてしまいました。B社としては,資金回収のため不動産を取り返したいと思っています。

 B社としては,戊社に対し,訴訟を提起し,不動産の贈与の取り消しを主張することが考えられます。このように,債務者が不当に財産を減少させる行為を取り消す権利を,詐害行為取消権といいます。

 詐害行為取消訴訟を提起したB社は,これを丁社に告知する必要があります。また,詐害行為取消権により契約等が取り消されれば,その取消しの効果は,債務者とすべての債権者に及びます。また,詐害行為取消権の行使には,期間制限があります。詐害行為取消権は,債権者が財産減少行為を知ってから2年,財産減少行為が行われた時から10年以内に行使される必要があります。

 

 

弁護士 梶本貴之
ホワイトペッパー第327号(2020/6/19発行)掲載