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リーガル通信 ~会社法改正 保険契約,社外取締役①~

2021年04月08日

今回も改正会社法の内容をご紹介します。

 

①役員賠償責任保険契約(D&O保険)について

 

役員等賠償責任保険契約とは、会社と保険者の保険契約のうち,役員等がその職務執行に関して責任を負うこと,または責任追及の請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が補填することを約するものであって,役員等を被保険者とするもの,を指します。役員等賠償責任保険契約は.役員等のモラルハザードを生じさせる恐れがありますが,他方で役員等の職務執行の萎縮を防止する必要があります。そこで,役員等賠償責任保険契約についての規定が新設されることとなりました。なお,PL保険,企業総合賠償責任保険,自動車損害賠償責任保険,海外旅行保険等については,役員等賠償責任保険契約から除外されています。これらの保険は,利益相反の恐れが類型的に低いといえるからです。

この点,役員等賠償責任保険契約は,利益相反性が類型的に高いと考えられるため,会社が同契約の内容を決定するには,株主総会決議(取締役会設置会社においては取締役会決議)が必要です。また,役員等賠償責任保険契約の締結に際し、会社法356条1項及び同2項,並びに同法423条3項の利益相反の規定は適用されません。これは,役員等に対して適切なインセンティブを与えるという役員等賠償責任保険契約の趣旨からすると,これほどの厳格な規制は相当でないと考えられたためです。

 

②社外取締役制度の改正について

 

 会社と取締役との利益が相反する状況にある時,その他取締役が会社の業務を執行することにより株主の利益を損なう恐れがある時は,会社は,取締役の決定(取締役会設置会社に会っては取締役会の決議)により,会社の業務執行を社外取締役に委託することができるようになります。また,この委託による業務執行によっては,社外取締役の要件を失うものではないこととされます。

 

弁護士 梶本貴之

ホワイトペッパー第345号(2021/3/発行)掲載