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リーガル通信 ~多重代表,内部統制,CO~

2021年05月12日

令和元年会社法改正を紹介させていただいたため,今度は平成26年の会社法改正を振り返ります。

 

⑴多重代表訴訟制度

 子会社の取締役の任務懈怠で子会社に損害が生じ,それが親会社の損害となることがあります。そこで,親会社の株主が子会社取締役の責任を追及する制度として多重代表訴訟の制度があります。多重代表訴訟は,親会社が子会社の100%親会社(最終完全親会社)でなければ提起することができません。また,多重代表訴訟は,子会社の帳簿価格が親会社の総資産の5分の1を超えるときに提起することができます(特定責任)。多重代表訴訟は,親会社等の議決権(または発行済株式)の100分の1以上を有する株主が原告となることができます(公開会社の場合は6か月前から株式を有することも必要です。)。また,多重代表訴訟は,①株主や第三者の不正な利益を図り又は親会社等に損害を加えることを目的とする場合は提起することができません。

 

⑵企業集団内部統制システム

 企業集団内部統制システムとは,企業集団の業務の適正を確保するための体制です。現在,企業集団内部統制システムを構築することが法律で要求されています。また,内部統制システムの運用状況の概要を事業報告書に記載することが必要となります。

 

⑶キャッシュアウト

 キャッシュアウトとは,支配株主が少数株主の株式のすべてについて承諾を要することなく金銭を対価に取得する手続きを言います。会社の議決権の10分の9を直接的・間接的に保有している者を特別支配株主といいます。特別支配株主は,株主総会決議を経ることなく,株式等売渡請求により,すべての株式ないし新株予約権の売渡しを請求することができます。なお,株式等売渡請求には売渡株主等の救済措置として,差止め請求,価格決定の申立て,無効の訴えなどが認められています。

 

 

弁護士 梶本貴之

ホワイトペッパー第349号(2021/5/7発行)掲載