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リーガル通信 ~傷害と暴行~

2014年01月29日

  先日,お笑いタレントの楽しんごさんが,元付き人の男性を殴ってケガをさせたとして傷害罪で書類送検されたというニュースがありました。確かにケガをさせれば傷害ですが,どのような場合に傷害罪になるかご存知でしょうか。


 そもそも「傷害」とは,人の生理機能と健康状態に障害をあたえることです。わかりやすい例は,殴って打撲を負わせたり,蹴飛ばして骨を折ったりしてケガを負わせた場合です。しかし,この傷害の定義によれば,ケガを負わせた場合以外でも傷害に該当する場合があるのです。例えば,裁判所が認めた事例として,失神,毛根からの毛の引き抜き,消えるまでに10日もかかったキスマークがあります。


 また,「傷害」することの方法に制限はなく,暴行以外の方法によることもあります。例えば,腐らせた食べ物を与え下痢に罹らせる,毒物を飲ませて下痢や嘔吐の症状を起こさせる場合も,傷害です。その他に裁判所が認めた例として,性病を感染させたケースや,約半年間ほぼ連日深夜から早朝に無言電話を掛け続け精神衰弱症を負わせたケースがあります。


 ここまでくると,傷害罪と暴行罪の区別が難しくなってくるのですが,逆に,暴行を加えても人の生理機能と健康状態に障害をあたえなければ,暴行罪です。暴行罪の暴行とは,人の身体に対する有形力の行使をいいます。典型的な例は,殴る,蹴るなどです。それ以外に裁判所が認めた例として,髪の毛を根本から切ったケース,お清めと称して塩を投げ付けたケースがあります。また,直接身体に触れなくても暴行と認められた場合もあります。例えば,拡声器を用いて耳もとで大声を発したケースや,室内で太鼓を連打し意識を朦朧とさせたケースがあります。


 いずれにしても,他人に迷惑を掛ける行為は控えなくてはいけませんね。


弁護士 原田宏一
ホワイトペッパー第165号(2014/1/24発行)掲載